2006年9月23日

権力犯罪にはメディアが連携を

沖縄返還協定「密約」スクープ

JCJ賞受賞の徃住さんが内幕を講演


JCJ北海道支部は、本年度のJCJ賞を受賞した北海道新聞中標津支局長(前編集委員)の徃住嘉文さんを講師に招いて、第三回JCJ北海道ジャーナリスト塾「『沖縄返還協定・日米間密約』スクープとメディアの使命」を九月二十三日、札幌市民会館で開いた。徃住さんは、沖縄返還協定の締結にあたって、軍用地として米側が接収していた土地の復元費用を「日本側が肩代わりした」という「密約」の存在を、当時の外務省アメリカ局長、吉野文六さんに認めさせたスクープについて、「他社が集め、記事にしてくれていた資料があったから、吉野さんに証言するよう説得できた」と内幕を説明。「権力犯罪を追及するには、メディアがみんなで立ち向かっていかなければならない」と述べ、記者たちの「良心の連携」が必要だと強調した。 

支部会員と市民合わせて十八人が参加した。徃住さんは、吉野さんが政府側として初めて「密約」の存在を証言した背景について、「若いころに抱いていた『平和な世界を構築できる外交官になりたい』という思いが消えていなかったのではないか」と分析。「米国に追随してアフガン、イラクに自衛隊を派遣するといった、戦前を思わせる軍事重視の小泉外交に対する抵抗感もあったからではないか」とも語った。また、道新が吉野証言を報じた後、共同通信や沖縄の地方紙、さらに全国紙各紙が追いかけて記事を掲載、朝日が新たなスクープを発掘することにもつながったことで、「物事が良い方向に回ってきている。まさにスクープはみんなで作るものだと感じた」と述べた。 

一方、「密約」の機密電文を入手した毎日新聞の西山太吉記者(当時)が、文書を漏えいした外務省の女性事務官ともに逮捕された事件に関して、「政府は違法支出しておいて、問題を男女関係にすり替えた。物事はすべて政府側のペースで運ばれた」と批判した。当時、政府側が「(密約に関する)電文は存在したが、日本側が蹴った」としたことについて、「すでに電文は機密ではないので、漏えいしても守秘義務違反には当たらない」と指摘。また、協定に明記されていない四百万ドルの支出が実際になされたとしたら、「根拠のない財政支出として、国家公務員なら告発しなければならない問題となる」として、二人の逮捕は「どちらから考えても矛盾に満ちている」と強調した。 

これを踏まえて、二人のみが弾劾された背景には、「当時の佐藤栄作首相が、何としても沖縄の祖国復帰を実現し、ノーベル平和賞を受賞したいという思いがあったからではないか」と指摘。そして、この「密約」を織り込んだ協定の締結は、「沖縄への米軍基地固定化と、現在も続く巨額の思いやり予算、さらには日本の海外への軍事進出の契機となった」と述べ、沖縄返還に関する本質論議を深めることの必要性を強調。物事の実体を隠蔽する政府の体質に対して、「権力犯罪を許さないという気持ちを記者の側が持ち続けなければならない」と力説した。


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