2007年9月17日

“戦争する国”へ日米一体化進む
「道央基地群」フィールドツアー

■自衛隊・演習場ルポ

 9月17日の祝日、JCJ会員を乗せたジャンボタクシーが真駒内の第十一旅団から地下鉄南北線のシェルターをくぐって西岡演習場に横付けした。曇り空の下、演習場内では近づく冬を前に、隊員がバイアスロンの練習に精を出している。一見するとのどかな光景だが、その視線の先に射撃と射爆の標的が並んでいる。紛れもなく戦争のための訓練が日常となっている現場があった。道路一本を隔ててゴルフ場や建設会社の資材置き場が連なり、平時と非常時が同居している。車は滝野すずらん丘陵公園を右に見て、突然、コンクリート道路に入る。西岡演習場からキャタピラー走行の戦車が有明演習場に入るための戦車道路である。有明への入り口は札幌市が管理しているらしく、立ち入り禁止の鉄の柵には防衛省、防衛施設庁などの文字は見当たらない。遊歩道が戦車道に平行して作られていることもあり、市民にはカムフラージュのようにも見えた。

 北広島インターから高速に入ると右側に島松演習場が広がる。左側には島松の北海道地区補給処が青い屋根を連ねている。この建物が北海道の兵器の買い付け担当を受け持っている。恵庭で高速を降り北恵庭駐屯地そばの駐車場に着く。祝日とあって隊内の動きは殆んどないが、一台十億円の“90式戦車”が幌を被って並んでいる。第7師団第72戦車連隊と第一戦車群合わせて百七十台を保有しており、これだけで千七百億円の装備だ。しかも、公道を走れない50トン型の戦車を恵庭の軍需企業の工場で組み立てる。財界と一体となった壮大な無駄遣いに怒りを覚えずに入られない。駐屯地の右隣には養護老人ホームが軒を接しており、何とも無神経な配置にも呆れる。

←北恵庭駐屯地の90式戦車

 北恵庭から南下すると南恵庭駐屯地につながる。ここは道路や橋の建設を専門とする施設団の司令部で、ゴラン高原や東ティモールなどのPKO活動に出動している。恵庭の工業団地に隣接して第一特科団を抱える北千歳駐屯地から旧米軍クマ基地の東千歳駐屯地までの道路はC経路と呼ばれ、40トンの戦車が通行可能なコンクリート道路が十キロに渡って続いている。平日はキャタピラー戦車が堂々と通行する軍事道路である。東千歳演習場の一角には「象のオリ」と呼ばれる短波の傍受施設が遠目からも異様な光景を見せている。直径150メートル、高さ30メートルの鉄塔36本が円形にそそり立っている。政治、軍事、各国の要人などの固有名詞がインプットされ、情報の傍受、解読に利用されている。

←戦車用に補強された橋の銘板
←「戦車橋」から伸びる「C経路」

 東千歳演習場の一角には、防衛省技術研究本部が新設され、一般人を寄せ付けないベールに包まれた秘密基地である。ジェット燃料を備蓄する丸いタンクが三基設けられ、施設全体の建設費は1兆円といわれている。防衛費が「聖域」であることを端的に物語っている。雨が降り出した午後、苫小牧の石油備蓄基地まで足を伸ばした。北電の苫東厚真火力発電所そばの敷地に、夕張メロンをほうふつとさせる2基のレドームが姿を現した。内閣衛星情報センターの受信管制局で、03年に打ち上げられた情報収集衛星の管制やデータ収集を任務としている。高速での帰路、道路公団が拠出して補強された“戦車橋”が何本も動脈を跨いで演習場をつないでいた。札幌から千歳までの広大な演習場群の視察には丸一日かかる。道東の矢臼別演習場、稚内、根室、網走、当別などのミサイルレーダー基地などと並んで、軍事基地の拡大、精密化、機動化、軽量化が進んでいることが胸に迫ってきた。

←千歳市郊外の高台にある「象のオリ」
←威容を誇る防衛省技術研究本部
←苫東の内閣情報局受信管制局

■アメリカいいなりの自衛隊再編


 イラク戦争をはじめとするブッシュの“暴走”が、アメリカの戦費の膨張につながり、米国民の激しい批判にさらされている。「対テロ戦争」を錦の御旗に、アメリカは同盟国や友好国とともにグローバルに戦えるシステムの構築に着手している。結果、日本の自衛隊に米軍再編の肩代わりをさせる動きが顕著になっている。中央即応集団司令部が座間に陣取り、沖縄の負担軽減の美名の下に、千歳でも戦闘機の訓練移転が本格化し、陸自の1/3を抱える北海道の重要性がいっそう推進されている。米海兵隊のグアム移転などに3兆円をつぎ込む日米同盟を許すわけにはいかない。9月18日から始まった矢臼別演習場での日米共同演習の恒常化、各港湾へのアメリカ戦艦入港の既成事実化、南方移動の前線基地化に向けた第11師団の旅団化、さらには東千歳の第7師団で進む戦車を駆使した都市型ゲリラ訓練の強化、各地での弾薬庫の新設ラッシュなど、米軍指揮下での自衛隊変容への布石が打たれている。

■平和構築へ告発するメディア

 「二度と戦争はしない」と誓ったはずのメディアは、世界の中の日米同盟の強化を黙殺していいのか。自民党総裁選候補の一挙手一投足報道には膨大な紙面と時間を割き、国民から明確に「NO!」を突きつけられた自・公政権の持ち上げ役に回っている。教育、医療、介護、年金など国民生活に痛烈な痛みを押し付け、大企業優遇に固執したまま、庶民の年金から次々に天引きで搾り取る。4月スタートとされる75歳以上の「後期高齢者医療制度」の凍結、障害者自立支援制度の撤回など、時の政府を告発する視点こそが求められている。  

 「戦争でテロは解決しない」が世界的な流れとなっており、憲法九条を背骨としている唯一の被爆国の進むべき方向は、日米軍事同盟ではない世界平和戦略の構築であろう。基地めぐりで明らかとなった戦費の無駄遣いから方向転換するだけで、社会保障の劇的な改善と国民生活の向上につながることは間違いない。メディアは常に国民の側に立って権力と向かい合いたいものだ。

←道央基地群を望むコムカラ峠で

(代表委員 古田俊暁)

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