2007年11月26日

地方発ドキュメンタリーの可能性語り合う
〜民放連最優秀賞記念、UHB「石炭奇想曲」上映会〜

ディレクター「東京発の報道に疑問感じた」

 JCJ北海道支部は今年の日本民間放送連盟賞テレビ報道番組部門で最優秀賞に輝いた北海道文化放送(UHB)のドキュメンタリー「石炭奇想曲 夕張、東京、そしてベトナム」の上映会を十一月二十六日、札幌市北区の北海道クリスチャンセンターで開いた。会員のほか、メディア関係者や市民計二十一人が出席、番組プロデューサーを務めたUHB報道部副部長の吉岡史幸さんとディレクターの後藤一也さんを招いて、番組内容の感想や制作の裏話、受賞後の反響などについて語り合った。

 番組(今年五月放送)は「石炭」をキーワードに、炭鉱が消えて財政再建団体に転落した夕張で暮らす人々、空前の石炭使用でフル回転する火力発電所が支える大都会・東京、北海道で培われた技術が新たな炭鉱開発に生かされているベトナムという三者の「今」を提示した作品。上映に先立ち、後藤ディレクターは、財政破綻した夕張の「自己責任」論が渦巻く東京発の報道に疑問を感じたとして、「あえて異議を申し立て、地方から挑発する番組を作りたかった」と製作に至った経緯を紹介した。

 後藤さんは昨年十月から、一人でカメラを担いで夕張取材をスタート。閉山に伴って人口が激減した南部地区を中心に、一月以降は頻繁に取材に通ったという。財政再建団体転落という厳しい現実の中でも、「住めば都」と夕張に暮らし続けるお年寄りや、札幌に家を持ちながらも夕張に住み続けてボランティア活動に汗を流す住民の姿などをとらえ続けた。昨年まで東京で勤務していた後藤さんは「最初に夕張報道を見たときは私も『自己責任』と感じた。しかし、取材を進め、夕張に住み続ける人たちの理由が分かった。人間にとって大事な価値がそこにあるのだということに気づいたからだ」と率直に語った。

 一方で、太平洋炭砿の事業を引き継いだ釧路コールマインの炭鉱マンたちが、ベトナムで技術指導を行う一方、増産された石炭が日本に輸出されている様子に対しては、出席者から「いい視点だ」「ベトナムの資源政策のしたたかさを感じる」との声が上がった一方で、「三十年後には石炭を掘り尽くし、『第二の夕張』になるのではないか」という感想も出た。後藤さんは「釧路コールマインの技術指導はあと二年で終わるが、その後の石炭の権益も商社が握っている」と紹介。しかし、商社は、ベトナムが「第二の夕張」化することを見越して「トルコなど他国での炭鉱開発にシフトしている」と語った。

 国内での石炭需要は、原油高騰に伴い急速に高まっており、後藤さんは商社と炭鉱との関係として、夕張・南部地区で炭鉱を運営、閉山した三菱グループの三菱商事が、豪州の炭鉱を子会社したことで過去最高益をあげたという皮肉なエピソードを紹介。「今や夕張が最高潮だった時代よりも多くの石炭を消費しているが、その利益はすべて東京に吸い上げられている。世界中で今、炭鉱開発に取り組む日本の商社の姿も、さらに追いかけてみたかった」と話した。

 また、民放が制作するドキュメンタリー番組について、吉岡副部長は「視聴率が取れないので深夜枠に追いやられている」と厳しい現状を紹介。キー局の方針や、地域限定ネットなどの関係で全国放送されていない良質な番組も多いといい、「北海道で見られないものは番組販売で放送するしか手段がない。しかし、スポンサーを見つけるのも難しいため、なかなか放送される機会はない」と語り、ドキュメンタリー番組に対する放送局側の姿勢を見直す必要性についても指摘した。

(事務局長 安藤 健)

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