2007年12月15日

NHKに欠けていた「人間」の視点
イラク戦争報道で12月例会

エナムさんがアルジャジーラと比較

 JCJ北海道支部は北大大学院メディア・コミュニケーション研究員の専門研究員でモロッコ出身のアブデルガニ・エナムさんを講師に招き、十二月例会「メディアはイラク戦争をどう伝えたか〜アルジャジーラとNHKを比較して〜」を十二月十五日、札幌市北区の北海道クリスチャンセンターで開いた。エナムさんは、両者が取り上げた二〇〇三年のイラク戦争報道を時間と内容で比較したデータを示し、「アルジャジーラはイラク国内から生の情報を得て、アラブ人の視点から放送しただけでなく、グローバルメディアとして国際社会を意識した報道を繰り広げた。一方でNHKは日本政府寄りの報道が中心で、イラク戦争を支持する情報が多く流された。NHKがプロフェッショナリズムに徹していれば、この戦争の真実をもっと知ることができたのではないか」と問題点を指摘した。



 エナムさんは冒頭、カタール・ドーハでアルジャジーラのアフマド・シェイク報道局長に取材した際のエピソードを語った。アルジャジーラの定義についてシェイク局長は「アラブのメディアとして独自の視点からニュースを発信しているが、立場としては国際的な視点に立っている」と説明。また、アルジャジーラが重視するニュースの価値判断については、津波のニュースを例に挙げ「人間にとって、人命にとって重要な出来事であるかどうかが取り上げる際の判断基準だ。これは各国の政治や貧困、病気などの社会問題についても同様だ」とした内容を紹介し、エナムさんは「人間にかかわるニュースだという視点はイラク戦争報道の中でNHKに一番欠けているものだと感じた」と強調した。

 続いてエナムさんは、両者の戦争報道時間を調査した結果を説明。アルジャジーラは、開戦前には戦争支持の報道が68%に上っており「米国に近いカタールの放送局として迷いが見られた」と指摘。一方で開戦後は、戦地からの生中継で米軍の活動とイラクの人的被害を強調するレポートや、イラク国内での戦争反対運動を取り上げ「意見を総括的に報道しようという姿勢が見られた」と総括した。しかしその半面、NHKでは、米国政府・米軍の活動に関する報道が56%を占めた一方で、イラク軍の活動や日本政府内部で戦争に反対する意見についての報道はゼロだったことを取り上げ、「米英軍を中心的な情報源としており、プロパガンダに利用されている。イラク国内での取材がなく、生の現実を伝えてきていなかった」と問題点を指摘した。

 会場には、会員のほか親子連れを含む四十人が参加。講演後の質疑応答では「9・11以降のアルジャジーラの報道姿勢はどう変化してきたか」「自衛隊のイラクでの活動はアルジャジーラで伝えられているか」といった質問の声も上がった。また、講演に先立って、通訳を務めた札幌在住のフリーライター木村嘉代子さんが、中東メディアの歴史とアルジャジーラの誕生について説明。カタールの首長が出資し、廃止されたBBCのアラブ語放送スタッフを引き継ぐ形で誕生したアルジャジーラが、BBCのスタイルを継承し、中立的な姿勢を堅持しながらニュースを放送している様子などが紹介された。

(事務局長 安藤 健)

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